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自然フラジオレットの早見表、作りました

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ピアノ三重奏のフラジオ

トップの譜面はラヴェルのピアノ三重奏、4楽章冒頭のヴァイオリンパートです。4本の弦すべてでフラジオレットを鳴らすという、一流プレイヤーも青ざめるような(たぶん!)難技巧を要求しています。

倍音を響かせることで柔らかくて澄んだ音を鳴らす「フラジオレット奏法」は、こんな風に近代以降は当たり前のように使用されるのですが、スコアリーディングのとき、このフラジオレットが障壁になることがよくあります。指板を押さえる音だけ書かれていることが多く、実際に鳴る音のイメージがわかりにくいのです。

今回はこの悩みを解消するため、フラジオレット(自然)の記譜と実音の早見表を作ってみましたので、これでフラジオを多用する作曲家(ラヴェルとかラヴェルとか……)の作品の読譜が捗れば幸いです。なお、私のヴァイオリンの腕前はきらきら星レベルです。

オーケストレーションを学ばれる方は、伊福部昭氏の「完本 管絃楽法」で非常に細かな説明がされていますので、高価な書籍ですが手に取ってみることをお勧めします。

フラジオ以外にも左手ピチカートなど、およそオケでは使わないようなテクニックについてもバッチリ記述があり、何でも載っているまさに百科事典的テキストです。

弦楽器のフラジオレット奏法について

自然フラジオレット

左手で指板を押さえるとき、弦の長さを2等分、3等分……する節目のところを軽く触れるだけにします。この状態で弓を弾くと、倍音による透き通るようなサウンドが生まれます。

下の図は、ヴァイオリンの一番低い弦(G線)でフラジオを鳴らすときのイメージ。左側が弦の振動と押さえる指板の位置を表したもので、これを楽譜で表すと赤いひし形音符の音高になります。

フラジオレットの概要

このいずれかを押さえて弾くとフラジオが鳴りますが、このとき出る音は青い音符で示しています。フラジオの記譜は色々ありますが、読むときは「ひし形なら押さえる音」「○印なら実際に鳴る音」と考えればOKです。

この図ではフラジオの出るポイントをすべて載せましたが、普通は一番低いポジション(図のそれぞれの一番左)のものをよく使います。つまり

  • 2等分点……開放弦の1oct上
  • 3等分点……開放弦の完全5度上
  • 4等分点……開放弦の完全4度上
  • 5等分点……開放弦の長3度上

です。この図にはありませんが、指板の間隔が広いコントラバスは、弦を6等分するフラジオ(開放弦の短3度上を押さえる)もよく使います。これについては後でご紹介する早見表をご覧ください。

記譜の仕方

次の図のように、開放弦(どの弦を弾くか)・押さえる音・実際に鳴る音のすべてを書いてくれる譜面なら簡単に読譜できます。ところが、押さえる音(ひし形音符)しか書かない楽譜も多いので、そのときは下の早見表が出番となります。

フラジオ記譜1

弾く弦については、音符ではなく文字で“sul D”など表記する場合もあるそうですが、あまり見たことはありません。

2等分点のフラジオ(開放1oct上)は、押さえる音と出る音が一緒になり、○印表記をすることが多いです。下の例はどちらも同じことを表していますが、右の方がより一般的な書き方。

フラジオ記譜2

人工フラジオレット

左手2本の指を使うことで、任意の音のフラジオを鳴らすことができます。一番よく見かけるのは、ベースになる音を人差し指(1の指)でしっかり押さえ、その完全4度上の音を小指(4の指)で触れるやり方。こうして弓を弾くと人差し指の2オクターブ上の音が鳴ります。

人工フラジオの例

この譜面はチャイコフスキーのVn協奏曲3楽章からの引用です。下の段の通りに弾くと、上のように聞こえます。A音が出るところだけは開放弦を弾くので人差し指を使わず自然フラジオになるはず。このようにフラジオでメロディーを弾くことも一応可能です。

自然フラジオ早見表

それでは、弦楽器4種類のフラジオレット早見表をご覧ください。弦を等分する節目であればどこでもフラジオを鳴らせますが、全部をピックアップすると大変見辛いので、よく使う代表的なものをまとめてみました。これで一般的な作品の90%以上はカバーしていると思います。

フラジオ早見表

5等分点のフラジオは開放の長3度上(1/5)と長6度上(2/5)の2種類を用意しました。長6度の方の使用頻度はかなり低いとか思いきや、ラヴェルのPf協奏曲のスコアを見たらところどころ使われているみたいですね。

ピアノ三重奏の例では……

ピアノ三重奏で実際に鳴る音

この早見表を元に、先ほどのラヴェルの三重奏の譜面を実音に直してみました。この譜面では開放弦の音程が省略されているため、下の音から順に関係を書いてみると

  • H……G線開放の長3度上 (1/5)
  • A……D線開放の完全5度上 (1/3)
  • D……A線開放の完全4度上(1/4)
  • H……E線開放の完全5度上(1/3)

となります。譜面のDの音だけ、実際はA音で鳴るので要注意。メロディーはリディア旋法でDが半音上がるので、フラジオレットの知識が浅かった頃に初めて楽譜を見たとき「なんでこんな譜面になるんだろう」と首をかしげた記憶があります。

このきらびやかなアルペジオをバックに、ピアノがオリエンタルなメロディーを奏でる、これまでのピアノトリオではありえなかった新しい響きを生み出しています。ただ、やはりこの音形は相当難しいみたいで、作曲者の意図通り明瞭に鳴らしている演奏は少ないような気も。

この作品を取り上げた後は完璧におまけですが、よろしければ私の三重奏もどうぞ。最後の1音だけフラジオを使っています。

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