オーケストラ・室内楽の制作(DTM)あれこれ

エイとタンチョウ

音楽制作環境

オーケストラDTMに必要なメモリ容量は?

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新しいPC(やMac)を購入する場合、メモリ容量をどうするかで毎度悩まされます。メモリがオンボードで、後からの増設が不可能なマシンも意外に多いですよね。これに対して最近のオーケストラ音源はマルチマイク収録が基本で、さらなる大容量化が進んでいます。複数マイクをフル活用するなら、それだけメモリの使用量も必要となります。ここで、オケ制作ではどれくらいメモリを積んだらよいのか、私の環境と作業の実感を述べつつ、手持ちのライブラリーのメモリ使用量についてもご紹介します。PC買い替えの時などの参考になれば幸いです。

私のイメージでは……

ここ数年オーケストラDTMに取り組んできて、セッティングもいろいろ試行錯誤しましたが、メモリ使用量について大体次のようなイメージを持っています。

  • 16GB……1マイクで、奏法を少し限定すればなんとか
  • 32GB……2マイクで、奏法を少し限定すればなんとか
  • 64GB……3マイクで、全奏法を読み込める(ただし、ロード時間は結構長い)

Cinematic Studioシリーズのように、すでに複数マイクを1つにミックスしたもの(ミックスマイク)がある場合は、メモリ消費を抑えられるので便利です。そうでなければ、Treeなどメインのマイクに、距離感調整用のCloseマイクを少しずつ足していくというやり方になるでしょうか。奥行きをつけるRoomやAmbientといったマイクは、音作りの変化幅が小さいため (効き目がわかりにくい)、最終バウンス時にロードすれば十分なことが多いと思います。

実際の制作例では……

下の「スケルツォ」の制作では、次の通りの編成・マイクで鳴らしています。

  • 弦楽器: Cinematic Studio Strings(ミックスマイクのみ)
  • 木管ソロ:Spitfire Studio Woodwinds Professional(Close1+2の2マイク)
  • それ以外はすべてSpitfireのSymphonyシリーズ(Tree+Closeの2マイク)

RAM使用量は、OSやDAWを含めて30GBほどとなります。CSSがミックスマイク1つだけで済んでいるので、少しだけ少なめの消費状況に。音源の読み込みはSATA3接続のSSDから行いますが、Cubase10へのロード時間を測ってみたところ、DAWのトラック画面が現れるまで約40秒、すべての音色のロードが終わるまで3分ほどでした。

CSSは、当初は自力でマルチマイクのセッティングを色々頑張ったものの、結局ミックスマイクそのままの方がよいという情けない結果になりました。距離感の調整はEQやリバーブで行っています。

1マイクだけで制作する場合

以前にピアノ協奏曲を制作したときは、打ち込み段階で1マイクだけを使うスタイルをとっていました。というのは、Embertoneのスタインウェイ音源の負荷が異様に高く、再生時のプチノイズがひどかったからです。現在はアップデートがなされ、その点の問題はなくなりました。

このときのメモリ使用量は、確か19GBだったはず。Spitfireの音源は使わない奏法をアンロードできるため、さらに節約すれば16GB以内での制作も可能だと思います(コンチェルトなので小編成にとどまっています)。

単独マイクでの打ち込みは、メモリ容量が足りない場合や、プロジェクトの読み込み時間を短くしたい場合にも有効です。使い慣れている音源なら、1マイクだけでも仕上がりの予想は十分につくと思います。曲が一通り出来上がったら各マイクの音をオーディオに書き出し、これをミックスすればOK。オーディオへの書き出しは、Cubaseなら「インプレイスレンダリング」機能を使うと便利です。

マイクミックス

簡単に図を描いてみましたが、各マイクごとのオーディオトラックをグループチャンネルに送り、全体的な音量調節が必要になった時はそちらの方でオートメーションを書きます(もし各トラックからセンドエフェクトを使っているなら、グループチャンネルではなくVCAフェーダーを使って音量を一括操作するといい感じになるはず)。

オケ音源のメモリ使用量の調査

Spitfire Symphony Complete

SpitfireのオケシリーズはSymphony, Studio, BBCといつの間にか3ラインも並ぶこととなりましたが、私がフルで唯一持っている最古参のSymphonyシリーズを取り上げてみます。残響をたっぷり含んだリッチなサウンドが売りですが、録音やプログラミングの荒さも結構目立ちます(後発のものはStudio Woodwindsだけ持っているのですが、Symphonyシリーズよりだいぶ丁寧にプログラムが組まれた印象を持ちました)。

まず、ロードするのは代表的な奏法が揃った基本パッチ。弦楽器はこの基本パッチにレガートが含まれていないので、レガートパフォーマンス(フレーズの速さやベロシティでレガートのタイプが変わる)も合わせてロードします。1マイクを読み込んだときのメモリ使用量は以下の通り。

  • 弦……4.31GB
  • 木管ソロ……1.32GB(Fl, Ob, Cl, Fg)
  • 木管a2……1.31GB(同上)
  • 金管ソロ……1.13GB(Tp, Hr, Tuba)
  • 金管a2……1.31GB(Tp, Tb, Hr)
  • パーカス……0.58GB(Timp, Drums Hi&Low, Metal)
  • ハープ……0.22GB

これは2管編成を想定した組み合わせで、合計すると10.18GBです。2マイクなら2倍、3マイクなら3倍の容量が必要となりますが、普段はCloseとTreeの2種類鳴らし、最終バウンス時のみAmbientを読み込めば十分だと思います。より大規模なものでしたら

Piccなど……1.09GB(Picc, CorA, Bcl, Cfg)
金管a6……0.79GB

あたりが必要となります。

Spitfire Chamber Strings

こちらは、Symphonyシリーズと同じ環境で収録された小編成(1st Vnで4人)の弦セクションです。Symphonic Stringsと比べると100ドル安くて容量も20GBほど少ないものの、実はこちらの方が奏法は充実しており小回りが利きます。

Symphonic Stringsのディヴィジ用として使用してもOKですし、少人数の割に編成は大きく聞こえますから、メインで使っても全く問題はありません。

先ほどと同様、基本パッチとレガートパフォーマンスを同時に読み込むと、弦セクション全体のメモリ使用量は1マイクで合計4.24GB。ほぼSymphonic Stringsと変わらない状況です。

Cinematic Studio Strings

名前こそCinematicと付いているものの、オケ用ストリングス音源として汎用的に使えます。1パッチをロードすればすべての奏法が使えるシンプルな設計もナイスです。デフォルトで読み込まれる「ミックスマイク」のRAM使用量は、弦楽五部の合計で3.64GB。先ほども書きましたが、私のオケ制作用途ではミックスマイク1つで十分です。きちんとマイクのセッティングをするのであれば、この3倍(11GBほど)のメモリ消費となります。

8Dio Anthology 1.3 (弦楽器)

2019年にリニューアルされた新しいものです。Vnは第1・第2に分かれておらず、同一のサンプルを使います。最初にロードされるミックスマイクの容量(弦楽五部の合計)は以下の通り。個別のマイクはCloseとFarの2つが用意されており、これらを使うと倍の使用量になります。なお、8dioのオケ音源は基本的にセンター定位のため(最近アップデートされたCentury Brassではポジショニング済みのマイクも追加されました)、ステージ上の配置をきちんと再現するならミックスマイクは役に立たず、個別のマイクでパンニングしなくてはいけません。

  • Ensemble(フル編成)……1.62GB
  • Chamber(各3人程度)……1.32GB(奏法少なめの割に、意外に多く消費)
  • ソロは未検証

1パッチで読み込めるのは最大で10奏法なので、アーティキュレーションの多いEnsembleでは以下に絞り込みました。これでほとんどは足ります。

  • レガート2種
  • サスティン、トレモロ
  • スタッカート、マルカート、スピッカート(2種類あるうち1つだけ)、ピチカート
  • トリル全音半音

8Dio Claire(木管楽器)

上のAnthologyと異なってこちらは3マイク収録です。ロード時はCloseの乾いた音が鳴りますが、ツリーマイクの臨場感もなかなかです。Anthologyとは音場がかなり異なるため、この2つを混ぜるのはちょっと苦労するかも。ゆったりとしたフレーズは情感たっぷりに歌わせられますが、キビキビと動くパッセージはそれほど向いていません(Spitfireの木管がこの真逆なのです)。例えばクラリネットのレガートはStrongと名がついていても音のアタックが弱く、後からクレッシェンドが強くかかるので使いにくいのです。

レガートは各2種類(Lyrical, Strong)のnkiがありますが、Strongの方だけロード。この他、サスティン、スタッカート、マルカート、トリル全音半音の含まれたGeneral Articulationsも読み込みます。1マイクのメモリ使用量は、

  • Fl, Ob, Cl, Fgの合計……471MB
  • Picc, CorAの合計……268MB

と軽めなので、3マイク読み込んでも低負荷です。CPUの使用率が不自然に高くなる場合、センドのコンボリューションをオフにすればOK。

Vienna Special Edition Vol.1+PLUS

オケ音源では長い間スタンダードだったVSLの入門版です。基本的な楽器の揃ったVol.1と、トリルなどの奏法を補うVol.1 PLUSとの組み合わせ。音源自体は非常に軽くロードも速いのですが、リバーブのMIRxなどがないとセッティングが非常に難しくて面倒だし、MIR系はかなり重いので注意です。

  • 弦……0.90GB
  • 木管ソロ……0.59GB(Fl, Ob, Cl, Fg)
  • 金管ソロ……0.45GB(Tp, Hr, Tuba)
  • 金管セクション……0.27GB(Tp, Tb, Hr)
  • パーカス……0.06GB(Timp, Drums, Cymbals+Gongs)
  • ハープ……9MB

ここまで合計2.26GB。ですから、以前はメモリ8GBのマシンで難なく動いていました。Vienna Instrumentsのロード時間もKONTAKTより速くて優秀だと思います。スケッチ用に便利……と思いきやドングルが必要なのでノートPCでは使いにくいかも。

最近は、パン振り等面倒なセッティングが要らないSYNCHRON-ized版も出ました。8DioやSpitfireのリッチな音に慣れてしまっているとやや古臭い印象はありますが、音が均一なため場面を選ばない安心感はあると思います。なお、豪華なスタインウェイのおまけ付きです。

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