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プロコフィエフとその他近代のピアノソナタの難易度ランクづけ

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近代のピアノソナタの難易度記事、前回はラフマニノフとスクリャービンについてまとめましたので、今回はプロコフィエフやその他の近代の作曲家の作品の有名どころをピックアップしたいと思います。

プロコフィエフはピアノソナタが合計9曲(10番は未完)があり、今回の記事では演奏会で取り上げられる機会の多い(と私が勝手に思っている)、2, 3, 6, 7, 8番のみ表に掲載しました。

難易度表

表の中のリンクをクリック・タップすると、各曲の解説部分にジャンプします。

ランクラフマニスクリャプロコ近代その他
▼雲の上
SSS
SS4番, 8番バーバー
S2番初版5番, 10番7番バルトーク
▼上級上
AAA
2番改訂版
2番, 3番
AA1番1番, 6番3番, 6番, 8番
A7番(白ミサ)
9番(黒ミサ)
2番ベルク
▼上級
BBB
ラヴェル
(ソナチネ)

プロコフィエフ

[S] 7番

プロコフィエフのピアノ作品の代表格であり、打楽器的な鋭いタッチと力強い推進力で、近代のピアノ作品でも極めて人気のある1曲です。

1楽章はほぼ無調で、意外にプロコフィエフでは珍しいです(響きこそ複雑なものの、調性は明確なことが多いので)。これに反して2楽章では不協和音が少なく、ラフマニノフのような鐘の響きを持ってメランコリックに旋律を歌い、好対照をなしています。

この作品は、手の大きさがある程度ないと和音がきれいに鳴らないという問題があります。例えば1楽章展開部で、短9度を含む4和音が頻繁に登場しますが、これは多くの方にとって届く音程ではあるものの、手が小さいと作曲者の要求するような強靱なタッチで弾けずに困ってしまいます。他の作品ならアルペジオで処理すればよいのですが、この曲の雰囲気には全く合いません。3楽章中間部の右手の長9度も同様です。

難易度Sを決定づけるのが3楽章後半の跳躍で、右手と左手で同方向に飛ぶために体の重心を揺さぶられ、これを克服するのが大変です。

プロコフィエフ7番ソナタのラスト

[AA] 8番

第2次大戦の戦中に書かれた6〜8番のソナタは、まとめて「戦争ソナタ」という総称で呼ばれることが多いです。8番は前2作に比べて柔らかく落ち着いた雰囲気で、技巧よりはポリフォニーを充実させた作品となっています。それにもかかわらず、ごく一部のフレーズがとても弾きにくいため、難易度は高めとなりました。

難しい箇所は本当に限定的で、終楽章のコーダのうち4小節ほどを除けば難易度は1ランク(ひょっとしたら2ランク)下がると思います。1楽章は展開部とコーダに出てくる細かいパッセージが難しいですが、音型に癖がなく対策は立てやすいはず。3楽章も同様で、古典派のソナタを思わせるような(個人的にモーツァルトの15番、ヘ長調ソナタに似ていると思う)オーソドックスなピアノ書法が目立ちます。厄介なのがコーダで、同音連打と跳躍によってテンポが乱れがちになりそう。

プロコフィエフ8番ソナタのラスト

[AA] 6番

長和音に増4の音をぶつけた劇的なオープニングで幕を開けます。6〜8番の「戦争ソナタ」の中では特に曲想の変化が豊かな作品であり、演奏者によって雰囲気が全く異なる1曲だと思います。プロコフィエフは何かとドライに弾きがちですが、時にはペダルをたっぷり踏み込んで空気を変えるなど、色々工夫すると立体的な仕上がりになりそう。

技巧面では、手の小さな方でも十分にチャンスがある作品です。跳躍・手の交差はプロコフィエフらしく頻繁ではあるものの、予想外の方向に行ってしまうことが少なく、対策の立てやすい音型がほとんどだと思います。

[AA] 3番

単一楽章で規模が程よく、主題やソナタの構成もわかりやすいので(再現部が異様にサッパリしていますが)、コンサートピースとしておすすめしたい作品です。若い頃の習作がベースになっているので、調性は明確、フレッシュでプロコフィエフらしい躍動感を持っています。同音連打や和音の駆け上がりで、軽やかさを保ちながら弾くのが難しい。

特に3連のリズム、右手は「タタン・タタン」、左手が「ンタタ・ンタタ」と弾く箇所のリズムが意外にギクシャクしがちなので要注意です。ピアノ協奏曲第3番の第1楽章にも同様の音型があり、こちらはテンポも速いので大変。

プロコフィエフ3番ソナタ

[A] 2番

4楽章制ですが、全部通しても20分かからずコンパクト。タランテラのような4楽章、再現部で第1主題と第2主題を絡める演出は見事ですが、弾くとなると多声部処理が忙しくて大変です。ダイナミックな手の交差も盛り込んでいますが、私だったら手抜きして両手の配分を入れ替えてしまうと思います。

その他のピアノソナタ

[SS] バーバー

4楽章のフーガが圧巻で、ピアノの全音域を使いながら素早いテンポで駆け抜け、音型もめまぐるしく変わっていきます。ピアノのために書かれたフーガとしては、多声部の扱いの巧妙さとピアニスティックさの両方を満たしている最高峰のものだと思っています。

難易度はとんでもないランクになりましたが、ソナタに技巧的なフーガを盛り込むと手が忙しく動き回ることになるため、やっぱりこのレベルの難さになります(ちなみに、ベートーヴェンのハンマークラヴィーアも同ランクに位置づけましたが、あちらの曲より理不尽さは少なめだと思います)。手の大きさはそれほど要求されず、1楽章で時々出てくる短9度が若干弾きにくいだけ。

楽譜については全音のもの(下)が入手しやすいですが、アメリカンで楽しい作品の「思い出」 (Souvenirs, Op.28) が入っていないので残念。

私が持っているのはSchirmer社のもの(表紙の色が違うものの、多分下の楽譜と同じはず)ですが、Amazon.co.jpだとやや高価なのがネック。個人輸入ができれば17ドルと送料で入手できます。

[S] バルトーク

重戦車が進むかのような分厚い響きで始まります。ホ長調をベースとしながらも複旋法(?)的な、バルトークの王道スタイルです。1楽章はテンポこそ速くないものの、細々と跳躍が盛り込まれておりリズムに注意です。

難易度づけについて、バーバーと同等の難しさのように聞こえるものの、バルトークの技巧は「手さえ大きければ何とかなる」ものが多いため、このランクとしています。特に終楽章は、長9度やそれ以上の広い音程を含むフレーズが多数登場し(下はほんの一例)、いずれも平均的な日本人の手では相当弾きにくい音型となっています。

バルトークのソナタ3楽章

[A] ベルク

譜面の見た目はかなりの難曲のように見えますが、アクロバティックな技巧が要求されるわけではありませんし、和音の1つ1つは古典和声に割合忠実で、譜読みも(同時代の作品に比べて)それほど困難ではないと思います。弾き手によって澄んでスッキリ聞こえたりドロドロ聞こえたり、演奏者を映し出す鏡のよう。全音音階が使われていますが、ドビュッシーとはだいぶ違った雰囲気に聞こえると思います。

[BBB] ラヴェル(ソナチネ)

ラヴェルの手にかかると、ソナタという古典的なスタイルの曲もこんなにオシャレになります。

技巧的には、古典和声とは異なった独自の音楽語法から来る、ラヴェルの曲全般に共通する難しさがあります。例えば、響きが充実しにくい(空虚)5度を多用すること、和音の平行移動が多く力を入れにくい手のフォームになってしまうこと。そして、手の重なり・ぶつかりが頻繁なところも悩みどころです。

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