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クラシック 音楽理論

ラヴェル風和声でおしゃれなワルツを作ってみる

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19世紀末~20世紀初頭は、様々な作曲家が新しい響きを模索していた時期ですが、その中でもモーリス・ラヴェルの音楽は大変親しみやすく、古典的な骨組みをベースとしながらも独創的な彩りや巧妙な仕掛けが曲の随所に盛り込まれています。

一言で言うと、ラヴェルの音楽はオシャレなのです。私の音楽は、オシャレさとは正反対のところにあるような気がします……そこで今回は、ラヴェルのハーモニーを真似して16小節の短いワルツを作り、その粋なポイントを学んでみることにしました。

私はアカデミックな音楽教育を受けた人間ではないので、作曲法のお勉強事情について詳しくは知らないのですが、古典的な和声法の勉強に続けて、古今の作曲家の様式を模作する「スタイル和声」のカリキュラムがあるそうです。

私もレイノー氏(パリ音楽院の教授)が書いたスタイル和声課題集のうち、ドビュッシー編、ラヴェル編を手に入れており、少ししか解いていないのですが結構収穫がありました。今回はそのおさらいも兼ねてチャレンジです。課題集はページ数も少なく、遠足のしおりみたいな装丁で数千円なので、正直高いなと思いましたが非常に役立ちました。

譜面は以下の通りです(クリックorタップで拡大)。

ラヴェル風ワルツ譜面

ラヴェルっぽく響かせるコツは色々あるのですが、すぐに実践できて効果がわかりやすいのは「半音ずらしてみよう、半音で進行させてみよう」というテクニックでしょうか。

具体的には5小節目、ト長調のトニックですからバスでソの音を鳴らします。通常なら上声には「シレソ」が並ぶはずですが、半音下げて「ラ#ド#ファ#」としてみましょう。これだけでもうラヴェルの響きです。

こんな風に、和音のバスだけそのままにして、上声の和音(全部または一部)をいろいろずらしてみると面白い響きが生まれます。これは、和声に関係ない音が集まって別の和音をなす「偶成和音」の考え方によるもので、今回のようにいきなり非和声音(倚音)が現れる場合(倚和音)は効果が劇的となります。

非和声音はそのまま放置せず、和声音に解決するのが伝統的なセオリーで、譜例でも次の6小節でト長調本来の響きに戻しています(ただし、第6音のミを経由してラヴェル度アップをはかります)。ご本人の作品では、中期の「高雅で感傷的なワルツ」で非和声音を大体解決させていますが、後期の左手コンチェルトやVnソナタになるともはや偶成ではなく主和音として堂々と使っているような印象です。

譜例に戻って、冒頭部はト長調のダブルドミナントが3小節持続しますが、ここで半音進行を連ねてみます。バスで保続音をしっかりキープしておけば、上声でかなりスリリングな進行をしてもそれほど違和感ないはず。

最後の段は、古典的なII-V進行の中、左手上声がうまく半音で上行するようにします。右手はそれに反行するラインを書きましたが、きれいにハマるとなかなか快感です。曲のラストは、ドミナントで導音(ファ#)を抜いてやるのがポイント。ラヴェルはIとVを行き来する強進行を主体的に使う一方で、「ドミナントくささ」を軽減する工夫もよく見られます。そして七の和音でフィニッシュ。

今回の例もそうなのですが、ラヴェルの曲のバスの線を追ってみると、実は非常に単純な進行のもとに構築されていることがわかります。クープランの墓「フォルラーヌ」の最初の4小節はとても独特の響きを持ちますが、実は極めて古典的なI-IV-II...のカデンツが根底にあるわけです。

フォルラーヌ冒頭

というわけで、以上ラヴェル風の明朗なワルツをご紹介しました。今回は長調の作例でしたが、短調の場合は教会旋法をうまく使って(短調の重さを軽減するドリア旋法、スペイン風のフリギア旋法etc)、フォーレ風にドリアIVを経由した半終止のカデンツなどを取り入れるとそれっぽくなります。近いうちに短調の例も作りたいのですが、飽きやすい性格なのでいつになるかは……

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